Языки

Клавиатура

Страница 28 из 185

Автор: 夏目漱石

Время0:00
Скорость (WPM)0.0
Точность100.0%

Нажмите старт и печатайте строки точно. · Backspace отключен — продолжайте даже после ошибки.

奥さんは火鉢の灰を掻き馴らした。それから水注の水を鉄瓶に注した。鉄瓶は忽ち鳴りを沈めた。
「私はとうとう辛防し切れなくなって、先生に聞きました。私に悪い所があるなら遠慮なくいって下さい、改められる欠点なら改めるからって、
すると先生は、お前に欠点なんかありゃしない、欠点はおれの方にあるだけだというんです。そういわれると、私悲しくなって仕様がないんです
、涙が出てなおの事自分の悪い所が聞きたくなるんです」
奥さんは眼の中に涙をいっぱい溜めた。
始め私は理解のある女性として奥さんに対していた。私がその気で話しているうちに、奥さんの様子が次第に変って来た。奥さんは私の頭脳に訴
える代りに、私の心臓を動かし始めた。自分と夫の間には何の蟠まりもない、またないはずであるのに、やはり何かある。それだのに眼を開けて
見極めようとすると、やはり何にもない。奥さんの苦にする要点はここにあった。
奥さんは最初世の中を見る先生の眼が厭世的だから、その結果として自分も嫌われているのだと断言した。そう断言しておきながら、ちっともそ
こに落ち付いていられなかった。底を割ると、かえってその逆を考えていた。先生は自分を嫌う結果、とうとう世の中まで厭になったのだろうと
推測していた。けれどもどう骨を折っても、その推測を突き留めて事実とする事ができなかった。先生の態度はどこまでも良人らしかった。親切
で優しかった。疑いの塊りをその日その日の情合で包んで、そっと胸の奥にしまっておいた奥さんは、その晩その包みの中を私の前で開けて見せ
た。
「あなたどう思って?」と聞いた。「私からああなったのか、それともあなたのいう人世観とか何とかいうものから、ああなったのか。隠さずい
って頂戴」
私は何も隠す気はなかった。けれども私の知らないあるものがそこに存在しているとすれば、私の答えが何であろうと、それが奥さんを満足させ
るはずがなかった。そうして私はそこに私の知らないあるものがあると信じていた。
「私には解りません」
奥さんは予期の外れた時に見る憐れな表情をその咄嗟に現わした。私はすぐ私の言葉を継ぎ足した。
「しかし先生が奥さんを嫌っていらっしゃらない事だけは保証します。私は先生自身の口から聞いた通りを奥さんに伝えるだけです。先生は嘘を
吐かない方でしょう」
奥さんは何とも答えなかった。しばらくしてからこういった。

Нажмите старт и печатайте строки точно.

Не начат