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Page 126 sur 185

Auteur: 夏目漱石

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私はKを説くときに、ぜひそこを明らかにしてやりたかったのです。しかしいえばきっと反抗されるに極っていました。また昔の人の例などを、
引合に持って来るに違いないと思いました。そうなれば私だって、その人たちとKと違っている点を明白に述べなければならなくなります。それ
を首肯ってくれるようなKならいいのですけれども、彼の性質として、議論がそこまでゆくと容易に後へは返りません。なお先へ出ます。そうし
て、口で先へ出た通りを、行為で実現しに掛ります。彼はこうなると恐るべき男でした。偉大でした。自分で自分を破壊しつつ進みます。結果か
ら見れば、彼はただ自己の成功を打ち砕く意味において、偉大なのに過ぎないのですけれども、それでも決して平凡ではありませんでした。彼の
気性をよく知った私はついに何ともいう事ができなかったのです。その上私から見ると、彼は前にも述べた通り、多少神経衰弱に罹っていたよう
に思われたのです。よし私が彼を説き伏せたところで、彼は必ず激するに違いないのです。私は彼と喧嘩をする事は恐れてはいませんでしたけれ
ども、私が孤独の感に堪えなかった自分の境遇を顧みると、親友の彼を、同じ孤独の境遇に置くのは、私に取って忍びない事でした。一歩進んで
、より孤独な境遇に突き落すのはなお厭でした。それで私は彼が宅へ引き移ってからも、当分の間は批評がましい批評を彼の上に加えずにいまし
た。ただ穏やかに周囲の彼に及ぼす結果を見る事にしたのです。
「私は蔭へ廻って、奥さんとお嬢さんに、なるべくKと話をするように頼みました。私は彼のこれまで通って来た無言生活が彼に祟っているのだ
ろうと信じたからです。使わない鉄が腐るように、彼の心には錆が出ていたとしか、私には思われなかったのです。

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