Книга · こころ
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Автор: 夏目漱石
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これは私の胸で推測するがものはない。先生自身すでにそうだと告白していた。ただその告白が雲の峯のようであった。私の頭の上に正体の知れ
ない恐ろしいものを蔽い被せた。そうしてなぜそれが恐ろしいか私にも解らなかった。告白はぼうとしていた。それでいて明らかに私の神経を震
わせた。
私は先生のこの人生観の基点に、或る強烈な恋愛事件を仮定してみた。(無論先生と奥さんとの間に起った)。先生がかつて恋は罪悪だといった
事から照らし合せて見ると、多少それが手掛りにもなった。しかし先生は現に奥さんを愛していると私に告げた。すると二人の恋からこんな厭世
に近い覚悟が出ようはずがなかった。「かつてはその人の前に跪いたという記憶が、今度はその人の頭の上に足を載せさせようとする」といった
先生の言葉は、現代一般の誰彼について用いられるべきで、先生と奥さんの間には当てはまらないもののようでもあった。
雑司ヶ谷にある誰だか分らない人の墓、――これも私の記憶に時々動いた。私はそれが先生と深い縁故のある墓だという事を知っていた。先生の
生活に近づきつつありながら、近づく事のできない私は、先生の頭の中にある生命の断片として、その墓を私の頭の中にも受け入れた。けれども
私に取ってその墓は全く死んだものであった。二人の間にある生命の扉を開ける鍵にはならなかった。むしろ二人の間に立って、自由の往来を妨
げる魔物のようであった。
そうこうしているうちに、私はまた奥さんと差し向いで話をしなければならない時機が来た。その頃は日の詰って行くせわしない秋に、誰も注意
を惹かれる肌寒の季節であった。先生の附近で盗難に罹ったものが三、四日続いて出た。盗難はいずれも宵の口であった。大したものを持って行
かれた家はほとんどなかったけれども、はいられた所では必ず何か取られた。奥さんは気味をわるくした。そこへ先生がある晩家を空けなければ
ならない事情ができてきた。先生と同郷の友人で地方の病院に奉職しているものが上京したため、先生は外の二、三名と共に、ある所でその友人
に飯を食わせなければならなくなった。先生は訳を話して、私に帰ってくる間までの留守番を頼んだ。私はすぐ引き受けた。
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Не начат