Книга · こころ
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Автор: 夏目漱石
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「私は他に欺かれたのです。しかも血のつづいた親戚のものから欺かれたのです。私は決してそれを忘れないのです。私の父の前には善人であっ
たらしい彼らは、父の死ぬや否や許しがたい不徳義漢に変ったのです。私は彼らから受けた屈辱と損害を小供の時から今日まで背負わされている
。恐らく死ぬまで背負わされ通しでしょう。私は死ぬまでそれを忘れる事ができないんだから。しかし私はまだ復讐をしずにいる。考えると私は
個人に対する復讐以上の事を現にやっているんだ。私は彼らを憎むばかりじゃない、彼らが代表している人間というものを、一般に憎む事を覚え
たのだ。私はそれで沢山だと思う」
私は慰藉の言葉さえ口へ出せなかった。
その日の談話もついにこれぎりで発展せずにしまった。私はむしろ先生の態度に畏縮して、先へ進む気が起らなかったのである。
二人は市の外れから電車に乗ったが、車内ではほとんど口を聞かなかった。電車を降りると間もなく別れなければならなかった。別れる時の先生
は、また変っていた。常よりは晴やかな調子で、「これから六月までは一番気楽な時ですね。ことによると生涯で一番気楽かも知れない。精出し
て遊びたまえ」といった。私は笑って帽子を脱った。その時私は先生の顔を見て、先生ははたして心のどこで、一般の人間を憎んでいるのだろう
かと疑った。その眼、その口、どこにも厭世的の影は射していなかった。
私は思想上の問題について、大いなる利益を先生から受けた事を自白する。しかし同じ問題について、利益を受けようとしても、受けられない事
が間々あったといわなければならない。先生の談話は時として不得要領に終った。その日二人の間に起った郊外の談話も、この不得要領の一例と
して私の胸の裏に残った。
無遠慮な私は、ある時ついにそれを先生の前に打ち明けた。先生は笑っていた。私はこういった。
「頭が鈍くて要領を得ないのは構いませんが、ちゃんと解ってるくせに、はっきりいってくれないのは困ります」
「私は何にも隠してやしません」
「隠していらっしゃいます」
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Не начат