Книга · こころ
Страница 15 из 185
Автор: 夏目漱石
Время0:00
Скорость (WPM)0.0
Точность100.0%
Нажмите старт и печатайте строки точно. · Backspace отключен — продолжайте даже после ошибки.
先生がどんなに苦しんでいるか、これも私には想像の及ばない問題であった。
二人が帰るとき歩きながらの沈黙が一丁も二丁もつづいた。その後で突然先生が口を利き出した。
「悪い事をした。怒って出たから妻はさぞ心配をしているだろう。考えると女は可哀そうなものですね。私の妻などは私より外にまるで頼りにす
るものがないんだから」
先生の言葉はちょっとそこで途切れたが、別に私の返事を期待する様子もなく、すぐその続きへ移って行った。
「そういうと、夫の方はいかにも心丈夫のようで少し滑稽だが。君、私は君の眼にどう映りますかね。強い人に見えますか、弱い人に見えますか
」「中位に見えます」と私は答えた。この答えは先生にとって少し案外らしかった。先生はまた口を閉じて、無言で歩き出した。
先生の宅へ帰るには私の下宿のつい傍を通るのが順路であった。私はそこまで来て、曲り角で分れるのが先生に済まないような気がした。「つい
でにお宅の前までお伴しましょうか」といった。先生は忽ち手で私を遮った。
「もう遅いから早く帰りたまえ。私も早く帰ってやるんだから、妻君のために」
先生が最後に付け加えた「妻君のために」という言葉は妙にその時の私の心を暖かにした。私はその言葉のために、帰ってから安心して寝る事が
できた。私はその後も長い間この「妻君のために」という言葉を忘れなかった。
先生と奥さんの間に起った波瀾が、大したものでない事はこれでも解った。それがまた滅多に起る現象でなかった事も、その後絶えず出入りをし
て来た私にはほぼ推察ができた。それどころか先生はある時こんな感想すら私に洩らした。
「私は世の中で女というものをたった一人しか知らない。妻以外の女はほとんど女として私に訴えないのです。妻の方でも、私を天下にただ一人
しかない男と思ってくれています。そういう意味からいって、私たちは最も幸福に生れた人間の一対であるべきはずです」
Нажмите старт и печатайте строки точно.
Не начат